心筋梗塞患者への退院指導
心筋梗塞で治療後の患者さん(田中さん)への看護師による指導の様子をご覧ください。
患者さんに生活習慣を変えてもらって,冠危険因子を減らしてもらうことをめざして指導した退院指導です。
2つのやり方を準備しました。
1つは,患者さんのことを考えて,なんとか変えてもらいたい。このまま変えられなければ,また心筋梗塞になってしまうかもしれない,という思いで指導したものです(コチラを指導Aとします)。
もうひとつは,動機づけ面接の要素を入れた退院指導です(コチラを指導Bとします)。
(※指導Aと指導Bの実際のやりとりの動画は,研修のなかでお見せしています。また研修後の方が見ることができる”研修参加者専用ページ”から見ることができます)
心筋梗塞患者への退院指導・指導A
看護師1
はい。じゃあ田中さん,今日は来ていただいてありがとうございます。
患者1
はい。
看護師2
少しタバコのことについてお話ししたいなと思うんですが,5分か長くても10分ぐらいお時間いただけたらと思うんですが,よろしいでしょうか。
患者2
大丈夫です,はい。
看護師3
この間, 先生からも,もうちょっとで退院近いなってことで,タバコの話あったかと思うんですが。お話聞いてみていかがでした?
患者3
うん。実際こう,先生からそういった話はあったんですけど,タバコってどちらかというと肺がんとか,ね,肺とか呼吸に悪い影響っていう,そういうイメージがあったんで, あんまりこう,心臓と結びつきがなかったんですよね。だから,先生から言われて正直驚いたっていうのが1つと,うん,いまだに,なんか実際に本当にそれって繋がってる?っていうな思いもあるっていうところですかね。
看護師4
なるほど。いや,もうかなりタバコって心臓に悪くてですね,タバコ吸うと いろんな影響でこう,心臓悪くなってくるっていうとこなんですが,先生からの話の内容としては,漠然としたというか,細かなところまでは覚えてないけど,なんとなく悪いのかなっていうところはわかった感じですか?
患者4
そうですね,なんか先生からそう細かくは全然話なかったんで,どちらかというとその治療をどういう風な治療したとかっていう感じだったんで,その中で タバコ吸ってるって言ったら,タバコはじゃあやめてください,それだけだったっていう,食事とかも言われましたけど, とにかくやめなさいって言われたっていうだけ。
看護師5
なるほど,今回田中さんが罹ってしまった心筋梗塞って病気は,心臓そのものに栄養を与える血管が細くぎゅっと細くなって詰まってしまって,心臓が栄養とか酸素が不足して動かなくなっちゃうとか,組織が死んでしまうっていうところが病気の大きなところなんですけれども,その細くしてしまう原因がタバコ。たばこによって血管がぎゅっと細くなってしまったりとか,あとは動脈硬化とかですよね,そういうのも影響して,かなり血流が悪くなってしまうっていうところが原因として考えられますので,今回,なんとか細くなったところを広げたりとか,そういう風な治療ができたので,退院したら,これまで吸ってたタバコは,やめてもらいたいなとは思ってるんですけれども,その辺,どうですかね。
患者5
うん,なんか危ない病気だっていうことはね,わかったんだけど,タバコ,今までほら,ずっと吸ってたし。うん,いきなりやめるってのはね,ちょっとね,なんか,難しいですよね,
看護師6
結構ね,お仕事もされてて,ストレスもあったりして,タバコが習慣になってたかなと思うんですけれども,今回の病気のように,本当に命に関わるところが,今回のタバコっていうところなので,なんとか,そうですね,完全にやめるっていうところじゃないにせよ,半分にするとか,3分の1とか,できれば,ほんと全部やめてもらいたいなと思うんですけども…。
患者6
言ってることは,よくわかるね。まあまあ,なんとかね,やめるしかないんじゃないですか。
看護師7
うん,なんでしょう,今回って,結構心臓ぎゅっと痛くなったりとかして,救急車呼ぶことになったと思うんで,ああいう風なことがまた起きちゃったりとか,仕事そのものも続けられなくなるかもしれないとかっていうのも,私たちとしてもすごく田中さんのこれからの生活に影響してくるかなと思うので,そこはぜひ覚えてもらって,本当にやめてもらえたらとはね,思ってるんですよね。
患者7
うんまあね,そうなんですけどね,いいですよ。とりあえず,うん,やめようとは思います。はい,やめようと思います。なんとかなりますよね。
看護師8
全部やめる感じですか。
患者8
全部っちゃあ,全部ってね,難しいんじゃないですかね。なんとか,なんとかやめようとは思います。
看護師9
少し,やめることをちょっと考えてもらえそうですかね。
患者9
だって,もう辞めるしかないでしょ。
看護師10
そうですね,ちょっと,うん。先生からもいっぱいお話あったかと思うんですけど。
患者10
そうですよね。なんとかなりますよ。なんとかしますよ。
看護師11
ね,ちょっとまた私たちからも,そのタバコと心臓に関するパンフレットとか少しお渡しするので,またぜひちょっと読んでもらえたらと思うので。すいません,ありがとうございます。
<指導A・つづく>
心筋梗塞患者への退院指導・指導B
看護師1
はい。田中さん,ありがとうございます。少し退院に向けてお話できればと思うんですけれども,ちょっと今,5分か10分ぐらいお時間よろしいですか。
患者1
はい。大丈夫です。
看護師2
先生からもお話あったかもしれませんが,少しタバコの話できればと思うんですが,心臓の疾患の心筋梗塞とタバコっていうところの話聞いてみていかがでした。
患者2
まぁそのタバコとね,今回の心筋梗塞っていう病気が,そういう繋がりがあるって,先生が言ってはいて,そうなんだっていう感じではあるんですけど,具体的に細かいところは教えてもらってないというか,治療の話はすごくされたんですけど,やっぱり別になんか今までも心筋梗塞とそのタバコが繋がってるってあんまりイメージがなかったので。どっちかというと,肺がんとかね,COPDだと思ってたんで, 実際本当に繋がってるの?ってちょっと疑問というか,そういった気持ちにはなりましたかね。
看護師3
まだあんまりタバコを吸うことが心臓に悪いんだなっていうのが少しイメージできない感じ。
患者3
うん。実感としてはあんまりないですよね。
看護師4
なるほど。ちょっと退院した後にまた心筋梗塞にならないようにとか,より田中さんの生活が安全にとか,不安なくとか,それから辛いことがなくなるようなところでちょっとお話できればなと思うんですが,例えば,今回,タバコと心筋梗塞の話で覚えてることって何かありますか。先生がお話ししたところで。
患者4
いや,特に先生もね,あんまり細かくは話してなかったんですよね。うん。とにかくタバコを吸ってますって言ったら,じゃあやめてくださいって。それだけでした。
看護師5
やめた方がいいよって話はあったと。少しじゃあ,タバコと今回の田中さんの心筋梗塞のところってお伝えできればと思うんですけども,少しよろしいですか?
患者5
はいはい。
看護師6
タバコを吸うことによって,今回の心筋梗塞そのものは,心臓に栄養を与える血管,冠動脈ていうものが,タバコを吸うことによって,ぎゅっと細くなったりとか,あと,血管が,よく言われる,動脈硬化っていうものもあったりして,細くなってきたりとか,弾力性がなくなってくることによって,血管が詰まってしまったりってところが原因として考えられてます。なので,退院後もタバコを吸うことによって, 今回治療した血管と違うところもまた細くなってきてしまうと,また同じように,心筋梗塞が起きてしまうので, 今回みたいな,ぐっと苦しくなったりとかっていうのもあるし,残ってる心臓の機能もさらに悪くなっていってしまうってことが考えられるっていうのが,禁煙してもらいたいっていうところの大きな理由になってきますね。
患者6
うん。なんですか。タバコ以外にも,他にもなんか色々原因とかあったりするんですか。
看護師7
そうですね。今言われてるものだと,例えば高血圧とかストレスだったりとか,それから高脂血症だったりとか,いろんな要因が関わってきて,心筋梗塞の原因としては考えられるかなと思いますね。
患者7
なんかいくつか当てはまりそうなところはね,確かにあるかなと思うんですけど…。
看護師8
結構タバコをやめてって先生に言われた時ってどうでした?
患者8
うん,ちょっとね,色々タバコ吸ってるにもほら,理由があるじゃないですか。そういったことも頭よぎりましたし,実際,仕事が結構ね,ハードで忙しくて。で, その仕事の合間合間の時間,休憩時間とかに,やっぱりこう,リフレッシュするっていう目的でね,やっぱこう吸ってるんで,それがどうしてなくなるっていうことが,果たして本当,仕事,あのね,パフォーマンスに影響しないかなとか,ちょっと不安はありますよね。
看護師9
田中さんとしては,すごいストレスのある中での仕事だから,そのリフレッシュのためとかパフォーマンスのためには,できればタバコがないとなって。
患者9
そうですね。なんかやっぱ集中力結構上がるんですよね,タバコ吸うと。だからそういう意味では,やっぱ仕事に影響を出したくない,悪い影響を出したくないっていうのはあるので,そこがちょっと心配です。
看護師10
まだちょっと心臓のためにはっていう風なところで禁煙の話は出たけれども,とはいえやめるのは自分にはもう無理かなって。
患者10
無理っていう感じではないかも。もちろんまだやったことがないんで,今までも。だから無理って言い切る感じではないんですけどね。ただ,ただ,やっぱりちょっとやったことないことなんで。うん,やってみて悪い方向に行っちゃったらちょっと心配かな。
看護師11
やってみたい気持ちは。じゃあ,少しあるかなぁって感じ。
患者11
うん,そうですね。うん,チャレンジはしてみようかなって,ちょっと思ったりしますけど。あと1ついうのは,生活の中でも,朝起きてタバコ吸うとか,夜とかも吸ってるんで, そういったところでか,生活に染みついちゃってる部分があるんですよね。だから,そこがなんかついついって,うん,なっちゃいそうでね, 大丈夫かなって思ったりします。
看護師12
確かに,生活の1つのリズムというか,いつもやってることとしてね,タバコ買ったり吸ったりっていうのは結構あるかなと思うので,そういう意味ではちょっとね,難しさは感じてらっしゃるかもしれないですね。
あと,今回入院で奥さんとも少し,私もちょっと会うことあったんですが,結構心配されてたかなと思うんですが,もし田中さんタバコをやめたりしたら,奥さんとかどんな風に思ってくれそうですか。
患者12
うーん,今までもね,あんまりいい顔理解してなかったんですよね。家の中でやっぱりこう吸ってて,最初の方はやっぱりそれで匂いがつくからって怒られて。で,今はもう家の中じゃ吸えなくなりましたし。
で,服にもやっぱり付けばその匂いが気になるって言って,それもやっぱりちょっとね,言われたりはするんですよ。でも,やっぱ仕事のね,影響もあるからって言って,そこはもうそこ,外でするのは勘弁してくれっつって,吸わせてくれっていうことで今までやってたんで,やめるってなったら,それはそれで奥さんもね,うん,やっぱりちょっと喜ぶんじゃないですか。
看護師13
匂いのこととか。うん。田中さん自身の健康とか。
患者13
そうですね。健康面についても, やっぱりちょっとね,家のまだ子供も幼いっていうかね。学校通ってるんで,これからのこと考えても 早くは死ねないなっていうのもある。
看護師14
少しタバコの本数減らしたり,もしくはいずれ禁煙できた時には,そういうお子さんとか奥さんとか,田中さん自身の健康にもいいところがあるかなって。
患者14
そうですね。うん。やめられたらって思ったことは何度かありましたけど,でも実際に行動に移したことはなかったんで。
看護師15
やめる方法がなかなか思い浮かばないなって。
患者15
そうですね。方法もね,どうやったらいいかって,確かにわかんないですよね。
看護師16
田中さんみたいにやっぱり体を使われる方って結構タバコ吸われる方が多かったり,あと,職場の環境としてもタバコ吸われる方多い会社に勤めていらっしゃる方もこれまで多くいらっしゃったのですね。なんかすごく田中さんの気持ちというか,やっぱり難しさっていうのはたくさん聞いてきたので,本当に 命に関わるって聞いたけど,難しいっていう気持ちもすごく聞かせてもらうと,なるほどなっていう風に感じましたね。
でも,なんとか私たちとしてもお力になれればなとは思ってるんですが,少し方法のところが,そういえばよくわかんないとこもあるなってことだったんですけども。
患者16
はい。うん。具体的にね。わかんないですね。
看護師17
うんうん。もし,変えられるとしたら,なんでしょう。 方法とか聞いてみたいなとか,自分に合う方法があれば知りたいとかっていうのは何か。
患者17
そうですね,なんかそういったね,僕に似たようなね,人たち,境遇みたいな方たちがいるんだったらね,そういう人たちがどうやってやめられたのかなっていうのは知りたいですね。
看護師18
そうですね。みんながみんなってところではないところもあるんですけれども,うまくいった方たちの例って,きっと田中さんに参考になるところもあるかなと思うので。はい。私の知る限りのところで お伝えできればと思うんですけれども,少しお話聞いてみますか。
患者18
いいですか。はいはい,お願いします。
看護師19
じゃ,ちょっと今その資料を取ってくるので。はい。ちょっとお待ちください。
<指導B・つづく>